台湾とリポート(1)


 どうもこんにちは、わたくし伴貞良と申します。元ミュージシャンで現在は写真講師を主な仕事にしております。こんな写真を撮っているんですよ。

 写真講師は楽しい仕事でしてやりがいも大いに感じるのですが、特に大きなシステムに属しているわけでもないので自由度が大変高く、写真を撮る人間として何をどう撮る、というのを時間と予算が許す限り好き勝手に構築できる立場にあり、それを活かして写真家としても活動したいと思っています。

 3年ほど前、台北に撮りに行ったことがありまして、よその地域や国に写真を撮りに行く、というのが殊の外面白いよねというのを知りました。

 商業カメラマンの世界であれば、私の場合は国内がメインなんですが「ここに行ってこんなの撮ってきて」というのはよくある話でして、最近はインターネットが発達しているものでカメラマンを現地で調達というのもちょいちょい聞きますが、難易度の高い仕事であればあるほど東京から指名で飛ばされます。

 しかしそれは飽くまでクライアントなり代理店なりからのオーダーがあるからでして、それと旅先で写真を撮るというのは全然かけ離れた行為。私としては一体何をどう撮ってどう使うのか、ピンと来ておりませんでした。

 いまから思い返してみると、写真作品という考え方自体が定まっていなかったんですね。ただ撮りゃ作品なのか? という。

作品?

 旅先で写真を撮ってそれをまとめて写真展をやったり、というのをライフワークにされている方もいらっしゃいますね。

 よく見るパターンが、国内で結婚式を撮って資金を稼ぎ、一定の額が貯まったらどこかに旅行がてら撮りにいって、現地の純真な瞳の子どもたちを撮って帰ってきて写真展やるみたいな。

 写真家と名乗っていてもなかなか写真だけを撮って食っていくのは難しいでしょうし、東京で写真展をやっていて写真家と名乗っていても写真を撮るのが正業でない人もたくさんいます。
 つまり写真家という名称は勝手に名乗る名誉職みたいなものになっているのですが、どうせやるなら自分の作品を撮ってそれで食いたいよね、と思います。

 仕事として写真を撮っていても、そういった写真を作品として扱うという世界とはあんがいご縁がありませんで、自分が写真を撮る場合はひたすらどこかから依頼があって「はい」とそれを撮って納める、というのがカメラマンの仕事。

 ですから、自分でいちど台湾に行ってみた際、事前に考えてはみたのですが、一体何を撮ったら良いのか、どう使ったら良いのかが全然まとまりませんでした。

 行って撮って、まあ実際楽しかったんですよね。時間を好きなだけ使って徘徊写真。楽しくないわけがありません。日常の見慣れた風景からはかけ離れているのが普通ですしね。

 しかしその後、3年ほどちょいちょいとそういった撮影旅行を繰り返してきた挙げ句、つい最近「これは……写真作品を撮ってまとめて写真展みたいの、向いてなくない?」と気づきまして、このブログを立ち上げることになりました。

使いみち

 写真って使いみちが色々ありますよね。
 旅先で写真を撮り、個人の懐に収めて「良かったなあ・・・」で死蔵するのも良いんですが、あわよくばお金にしたいと思うのが人情というもの。

 実際、旅で撮ってお金が稼げるのであれば、そんな楽しいことはないじゃないですか。次回の旅の資金になりますしね。これは作品として撮るのであろうが商材として撮るのであろうが基本的には同じことと思います。

 ですから撮りに行く前にあれこれ考えるんです。
 前述の写真展をやって、はそのままだと「見せた」「よかった」で赤字垂れ流しで終わってしまいますが、そこから写真集を作って売って回収しよう、だとか、ストックフォト向けに写真を売ったら良いんじゃないかとか、色んな人が寄稿する旅サイトみたいなところで写真を買ってくれるんじゃないかとか、なんとかかんとか。

 しかし結局のところ、私はどれも興味が沸かなかったんです。

 なぜかと言うと、それぞれ既にある媒体に写真を買ってもらうことを考えると、その媒体の人達が使いやすい写真が売れるに決まっているわけで、逆算すると売りやすい写真を撮らないといけないんですね。

 たとえばストックフォトであっても観光写真であっても、どこそこはこんな風景だよ、というのを見せようと思ったら、普通は晴天のスカッとした写真が好まれます。そりゃまあそうです。

 私の場合は別に晴天の時を狙いすまして、という撮り方はしようと思っていないので、これはストックフォト向きじゃないんだなあ、ということになります。あの発想は風景写真家の方だとスッと馴染めるかもしれません。

 他のジャンルについても、自分で実際あちこちに行って撮りながら考えてみると、どうも違うなあ、しっくり来ねえなあ、ということばかりで、これはつまり自分のスタイルというものを見つけるための旅なんだなという風に思いました。

台湾のポジション

 2020年7月1日、中華人民共和国香港特別行政区国家安全維持保護法が施行されました。

 香港はスナップ写真をやる人間にとって、NYと並び聖地と称されるほどの土地です。私も2019年の後半から香港に撮りに行こうかしらと思っていたのですが、情勢が読めず、そのうちにコロナウイルスの問題で渡航が実質不可能になりました。

 また今後、中国当局は外国人であってもフリーハンドで拘束することが可能になってしまいますから、いらぬリスクを避けようと思うのであれば好き好んで中国本土へ行こうとはあまり思わないでしょうし、行って撮って知らしめて彼らの経済活動を利する形になっても、現在すでに中国に領土を脅かされている日本人の私は嬉しくありませんから、何かよほどのきっかけがない限り中国には行くことはもうないでしょう。

 香港亡きあと、次は台湾に向かって中国共産党がにじり寄るのは目に見えていますから、別に台湾がこれからなくなるから、というわけではないのですが、どう考えてもこれからじわじわと変化していかざるを得ない台湾を撮りに行きたいな、と思っているんです。

 つまり風光明媚な台湾であるとか、美味しいものがたくさんあるよ、という角度の写真には撮ることも使うことも興味が沸かなかったのですが、台湾がどういう国であるかというのは写真の力で描き出したいなあと思っているんです。

 それには街角をぷらぷら散歩するだけではなく、もうちょっと人にフォーカスして情報を得るしかないという結論に達しました。

このブログはフォトジャーナル

 フォトジャーナルと名付けてブログを始めたからには、フォトジャーナルをしないといけません。

 人やモノや場所、出来事なんかが「あったよ」というのを写真と文章の力でネット上に刻み込んで行くのが仕事です。

 ですから、次回台湾に行った時には、台湾に(おそらく台北に行きます)記されるべき人がいて、ことがあったよ、というのを記事にまとめることになるでしょうし、逆にいえばそういう記事になるように写真など情報を集める必要があるなという風に思います。

 それはつまり取材というやつで、これまで3年間、なんとなくスナップをして回って「俺の写真作品を撮らなくちゃ……!」とやってきたことも無駄ではなかったのですが、それをやるならやるで、写真展なりプリントを作って売ることを目標にしなきゃならなかったはずが、全然出来ませんでした。

 いやね、「台湾を撮ったぜ!」つって写真展をやって他人に見せたいか、って自分に問うてみると、いや別にそういうのは違うな、と思うんです。人と集まってわいわいやりたい、みたいなのも興味がありません。

 私がやりたいのはプリントを誰かの家に飾って欲しいなあ、という出口なものですから、写真展がゴールでなければ写真集がゴールでもないんですね。

 また旅先で撮った写真でやりたいかと聞かれるとまた違ったんです。
 旅先で撮った写真、気に入った写真もたくさんありますから何かしらの形にしなければならないとは思うのですが、そもそも最終形態として写真集を作るために撮っている気持ちではないし、それだったらジャーナルという形でまとまるように撮った方が良いじゃんという気持ちです。


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