2021年11月・神戸(1)


 前日の夜のうちに名古屋から神戸に到着し、明けて翌日、朝から神戸の観光スポットを巡る都市景観撮りを開始しました。

 と書くとえらく硬い感じがしますが、実際は前日の名古屋撮りの疲れを引きずった四十男がカメラを片手に神戸の街を徘徊した、というお話。

 神戸は以前からイベント撮影でなんどか訪れたことがあった筈ですが、公共の交通機関で訪れて現場に直行直帰と慌ただしいのが常だったので町並みを眺める余裕はほとんどなく、今回自走で訪れてみて初めてじんわりと土地柄が伝わってきた気がします。

 率直な事前イメージとしては港町、おしゃれタウン、ルミナリエ、広域指定暴力団あたりでしょうか。実際に訪れてみると、横浜と相通ずる港町らしくサラッとおしゃれな感じと、路地裏にほんのり残る猥雑さが感じられて魅力的な街でありました。

 もちろんわたし個人としては路地裏の方に興味があるのですが、仕事としては「ステキ神戸」を撮らなければならないので、行く場所行く場所観光地、かつきちんと整備されているところばかりです。そのなかで拾い上げたガリガリスナップをどうぞ、というのが今日の写真のテーマになっちゃいますね。

 最初に訪れたのはポートピアあたり、といえば良いのでしょうか、出島のようになっているポートアイランド、神戸空港のひとつ手前のところです。神戸の皆さんは中心部と空港が近くて良いですねえ……。ポートピアといわれると、特定の世代にはファミコンの「ポートピア連続殺人事件」が思い出されます。

 そしてポートアイランドの北端にあり、北西にメリケンパーク方面を望む北公園へ。

 うーん黒い。

 仕事として撮る「たのしい神戸」でなくても良い、好きに表現せえ、ということになるとこうして黒い写真が増えます。

 そして船着き場へ。

 神戸の海沿いエリアって横文字ばかりで埋め尽くされていて脳が混乱しますね。横文字には耐性がある方だと勝手に思っているのですが、カタカナで地名が付けられていて、しかも似たような単語が入れ替わり立ち替わり現れるので覚えられません。仕方がないことですがポートなんとかが多すぎる。

 港エリアで一番しっくり来た名称は「ホームセンターコーナン」です。なんだかほっとしましたよ。

 しかしよく考えてみると、そうした横文字ばかりの地名になっているのは、神戸の行政が「おしゃれ感を強くして女子ウケを良くしよう」とやってきた結果なわけで、街自体がそういうしつらえになっており、まあ野良おじさんがウロウロしてしっくり来る場所ではないわな、という感じがします。ルミナリエなんかもモロにそうだもんなあ。

 当ブログは私みたいな職人気質のおっさんが見て面白いサイトを目指すので、そうなると例えば今回のように神戸を撮るといっても、よりそちらに寄った取材地選びが必要になりそうです。少なくともメリケンパークの写真を見て「きゃーステキ」と喜ぶおっさんは少なそうですね。
 こういう点も、やってみなきゃ分からねえに含まれるところなので今回は良い実地訓練になりました。

 そしてメリケンパークあたりをうろうろ。どうしても目がかっこいい構造やテクスチャーを探して撮ってしまいます。

 昔むかし、わたくしが中学生だった頃、デズニーランドへ連れて行かれた際に「ふぁーっと楽しいんだけど何もないな」と思ったのをよく覚えています。ウエスタンランドのサボテンは、客に刺さらないように棘が全部抜いてありました。現在の感覚でいえば、その棘こそが私の撮りたいディテールです。

 もちろん神戸の観光スポットは遊びに来たお客さんに快適に過ごしてもらうために地域の皆さんが全力でしつらえた結果こうなっているわけで、そこにいると実際ふぁーっと気持ちが良くなります。観光地というのはハードなスナップ写真を撮りに行く場所ではなく、誰かと一緒に行って楽しみ、思い出を作る場所ですから正しいんです。

 ただ写真に撮ったところで厚みが感じられるものはなく、目的が全然違うもんな、という風に思います。善悪や優劣ではなく目的が違うんだからしょうがありません。観光地で普段の生活を忘れて気持ちを軽くしに来ている人たちの邪魔をしちゃ悪いや、という感じすらします。

 逆にいえば、観光地を撮ると決めたのなら、そのふわふわした軽い感じを撮るべきなんでしょうね。良い意味で軽薄に徹するべきだし、そこを上手く割り切ったのが誘致用の観光写真なのだろうと思います。写真に何を写すのか写さないのかを、こうした面から詰めていく作業が必要ですね。

 というようなことを考えながら、神戸撮りは続きます。


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