パリ郊外(Pantin):パリ2017


 こんにちは。パリ2017、パリ市の中心部の「いかにもなパリ」とは違った、ちょっと郊外の様子をまとめてみました。

 撮影上の都合からいえば「単に宿舎が郊外にあった」「そのへんをうろうろ散歩しながら撮っていたらそうなった」というだけの話ではあるのですが、後から掘り返してみるとあんがい面白い角度でありました。

バンリュー=郊外

 パリは20の行政区から成っておりまして、中心部の市庁舎あたりからぐるぐるっと巻き貝のように配置されています。ですから練馬区ってどのへんですか、みたいなこともなく、地理が非常に分かりやすいっちゃ分かりやすいんであります。

 そもそもパリって以前調べたところでは、パリ20区って東京23区の1/6くらいの面積しかなかったはずで、大都市ではあるんだけど小ぢんまりとしているんですね。

 ただパリと呼んだ場合はその20区内を指していることは間違いなく、ぐるっと円を描くパリ20区から外れた地域は郊外(バンリュー=Banlieue)と呼ばれます。

 2017年に滞在した際、AirBnBで借り上げた宿舎があったのがここ。

宿舎からの眺め。最上階でした。
煙突……? 暖炉がある?
目の前が小学校。でも静かなものでした。日本の学校、たぶんすごくうるさい。

 歩いてすぐのところにパリ19区との境がありまして、そのすぐ外なのでほとんどパリみたいなものですが、地域的にはパンタン(=Pantin)といって「そう豊かではないパリ郊外の町」という扱いのようです。

 Wikipediaなんかを読んでおりますとパリは英米と都市の構造が違うということなのですが、郊外、英語でアーバンという言葉を当てはめると一緒だなという印象。

ゲーテッドというほど隔離されていないんだけど一応そういう感じのところもあります。
パンタン猫

 英語のアーバンというと、日本語ではアーバン=都会、というふうに翻訳されていますが、実際に行ってみると「ここアーバンっていうけど……都会か?」という感じがしたりするんですね。ややこしいのは、英語の辞書を見てみても、urbanという言葉は、普通は都会、都市、都市計画みたいに訳されるのですが、あとの方で

4. of or relating to the experience, lifestyle, or culture of African Americans living in economically depressed inner-city neighborhoods:

https://www.dictionary.com/browse/urban?s=t

 みたいな訳が出てきたりして、一筋縄で行っていない印象。つまり英語話者の人たちも、アーバンという言葉をストレートに「都会」という用法で使っている場合と、「メトロポリスで働くブルーカラーが住んでいる都会の中のちょっと貧困な地域」というのを使い分けているようなんです。

 上記サイトの下の方に記載があるurbanという言葉の歴史を見てみると、1950年代以降、南部から北部へ移住したアフリカ系市民が都市に居着いてそこから逃げ出した白人がサバーバン(こちらが日本では郊外と訳されたりします)に移住し……みたいなことが書いてあります。

 これは要はアーバンなエリアを大都市に含めるか否かの区分けの問題であって、起きることは一緒なんですよね。

 つまり大都市の真ん中で働くホワイトカラーとブルーカラーがそれぞれどれくらい遠くに住むかであって、パリの場合はお金持ちが中心部に住んでいるようですが、中心部は家賃が高くなるので、中心部(=メトロポリス)で働いているブルーカラーはそこに住めなくなって通えるんだけど家賃が安い郊外に引っ越す、という。

 東京の場合は単一民族なので人種によるブルーカラーホワイトカラーの明確な違いはありませんが、まあ虚心坦懐に見ていれば日本人の中でも人種の違いはあるわな、というのは感じます。お互いに触れ合う機会がないだけで、意外とちゃんと階層は分かたれているんですよね。カメラマン仕事をしていると両方の世界を行き来するので大変おもしろいんであります。

 滞在していたパンタンはまさにそういうエリアだったようで、パリの中心部とは人種も格好もちょっと違う、よりくだけた雰囲気でありました。私はこっちのほうが過ごしやすくて好きでした。

 歩いてうろうろしてみても、パリ中心部ほどの歴史や、建物、人間の密度は感じないんだけど明らかに日本じゃないなという感じ……伝わりますか? ちょいちょいパリ感、ヨーロッパ感が顔を出す感じが楽しいんですよね。

 ただ郊外扱いの土地なので、密度が低いということは写真を撮る間隔もけっこう広いので、なかなか歩かされます。撮影密度が低いといったら良いんでしょうか。

右手がパリ市内、左手が市外だったかな。

 当ジャーナル内の記事にするのだったら、何時間か散歩しながら撮って「パンタン探訪」で記事になっちゃいそうな感じがしますね。実際は空き時間にちょこちょこと撮りためた写真なので、似たような場所ですが複数日程に渡っています。

郊外だから空が広いというかパリは高い建物があんまりない

 ああ~自分で振り返ってみても、作品としてのスナップ! と思い込んで撮るよりも、こうして日常が出ちゃってる写真の方が好きですね。

 というわけで、同じ宿舎からの夕暮れでパリ郊外・パンタンのレポはおしまいです。


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